(社説)東京五輪の年に 旗を振る、って何だろう

あなたはこれまで旗を振ったことがあるだろうか。
運動会の応援やスポーツ観戦、あるいはイベントやデモに参加したとき……。

いったい旗とは何か。米国では、星条旗をこう表現するそうだ。「あなたの信じるすべてのものになりうるだろう」

今年は東京五輪が開かれる年である。多くの人が多くの旗を掲げる機会がありそうだ。メダルを胸に旗を誇らしげに見上げる人もいるに違いない。

そんな年の始まりに、少しだけ考えてみたい。そもそも人はなぜ、旗を手にするのか。

<中略>

「日の丸」に対しても、複雑な感情を抱く人々がいる。

戦後75年が過ぎても、そうした人々から見れば、日の丸を掲げる行為そのものが、侵略戦争の暗い記憶を呼び起こすものにほかならない。

東京五輪で旭日(きょくじつ)旗を振るのを禁止すべきだ――。
最近、韓国の人々からは、そんな声も伝えられる。旭日旗は旧日本陸海軍の旗であり、いまも海上自衛隊の自衛艦旗である。

日本政府は「(旭日旗が)政治的主張だとか軍国主義の象徴だという指摘は全く当たらない」と反発している。

そう簡単に言い切れるものだろうか。

昨年のラグビーW杯の観客席でも一部で旭日旗が振られた。わざわざ国際競技の場に持ち込む人の目的は何だろう。
快く思わない人たちがいることがわかっている旗を意図的に振る行為に、「政治的主張」はないといえるのだろうか。

旗がまとう背景や、使う人の意図によって旗は色々な意味を映す。受け止める人次第で見え方が正反対になることもある。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14322936.html