浄化実り、イワシの大群 堺・土居川
朝日新聞デジタル

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夜、川面を埋めるマイワシの群れ=1日、堺市堺区、鍋島靖信さん撮影

 堺市堺区の土居川にマイワシの大群が現れた。中世に繁栄を誇った環濠(かんごう)都市・堺の名残を美しくしようと、市や住民が努力を重ねてきた成果だと、関係者を喜ばせている。

 マイワシの大群は先月20日、国道26号住吉橋の付近にいた。体長20センチ程度の無数のイワシが川面を埋めていた。水の透明度は高く、水中でスズキ、川面からはカワウが、イワシを追いかけて泳ぐ姿も見えた。

 堺区に住む元府立環境農林水産総合研究所主任研究員の鍋島靖信さん(66)は11月22日夕、群れが住吉橋の1キロほど上流まで上がっているのを確認した。今月に入ってからは、下流の南海本線堺駅付近の竪川(たてかわ)で夜に群れが見られるという。

 地元育ちの鍋島さんは「川がきれいになったことが大きい」と指摘する。高度成長期の土居川は底に黒いヘドロがたまり、臭気もひどかった。

 土居川の起こりは中世の環濠だ。豊臣秀吉の時代に埋められるが、江戸時代に掘り直された。江戸中期には北側にも堀が延ばされ、現在は内川と呼ばれる。

 堺市はこの二つの川を再生しようと、1998年に再生プランを策定した。

 土居川と内川は、雨水以外に流れ込む水がほぼなく、潮の満ち引きで水が行き来する「感潮(かんちょう)河川」だ。

 市は2001年度から05年度にかけ、川底にたまった延べ1万2千立方メートルのヘドロを除去した。川に「流れ」をつくるため、堺区の出島漁港で毎日1万2千トンの海水をくみ上げ、土居川の上流部2カ所から流す仕組みを11年から稼働させた。

 市河川水路課によると、水質汚濁度を示すBOD(生物化学的酸素要求量)は、06〜10年は平均で1リットルあたり5・4ミリグラムで、一般に魚がすめるとされる5ミリグラムを上回っていた。導水開始後の11〜18年は同2・6ミリグラムと、大幅に改善している。

 市が14年に実施した生物調査では、延べ30種類の魚介類が確認され、秋にはウナギも見られた。08年の調査では延べ16種類だった。

 12年にボラの大群が現れたことがあったが、マイワシの大群は初めて。柿本貴紀・市河川水路課長は「海水導水に加え、地元の方々が年2回美化活動に取り組んできた成果だと思う。さらにたくさんの魚が身近に見られる川になれば」と期待を寄せる。(加戸靖史)

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