大阪医大(大阪府高槻市)の元講師が在職中、無届けで脂肪幹細胞を人に投与する再生医療を行ったとして、
大阪府警が九月に大阪医大を再生医療安全性確保法違反容疑で家宅捜索していたことが、捜査関係者への取材で
分かった。大阪医大によると、厚生労働省は八月、同法に基づき大学を立ち入り検査した。厚労省は刑事告発を検討する。
捜査関係者によると、元講師は五十代の男性医師。大阪医大の研究施設で今年春ごろ、四十代女性の脂肪幹細胞を
採取して培養し、この女性に点滴で投与したとされる。老化防止(アンチエイジング)の効果があるとして投与したとみられる。
大阪医大によると、五月に内部通報があり、事実関係を調査。女性を含む四十〜八十代の男女四人から必要な手続きを
経ずに脂肪組織を採取して培養していたことが判明した。他にも五十代女性が投与を前提に局部麻酔を受けた。
全て本人の希望だったといい、健康被害は確認されていない。大学は六月に厚労省に報告し、八月に元講師を
諭旨解雇した。
元講師は内部調査に対し「(患者側から)依頼を受けて、断り切れなかった。大学に伝えないといけないのは
分かっていた」と説明している。
同法では、再生医療で臨床研究などをする際、国が認定した専門家の委員会の審査を受け、計画を厚労相に
提出することが定められている。無届けで実施したり、研究施設に許可がなかったりすれば罰則がある。
専門家によると、脂肪幹細胞は、さまざまな細胞に分化する能力を持った体性幹細胞の一種。皮下脂肪組織から
抽出でき、乳がんで失われた乳房の再建手術などで使われる。静脈に注射投与した場合、肺の血管が詰まる
肺塞栓(そくせん)を起こすリスクがあり、国内でも過去に死亡例がある。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201910/CK2019102502000270.html