日本人にも人気の観光地ダナン、「1円も落とさない」中国のお得意様に苦い顔
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天空に浮かぶ橋を、こけむした巨大な両手が支えている。美しい砂浜の続くダナン中心部を離れて、車で40分ほど。ケーブルカーで山々を越えた先に「ゴールデンブリッジ」が見えてきた。
昨年、山の中の観光施設「バナヒルズ」に完成した橋は、ぞくぞくするような奇妙な光景がSNSで拡散され、一気に注目されるようになった。
橋の上で自撮り棒を手に写真を撮っている人たちに聞くと、中国・深センから来た団体客だという。
【写真】ダナンの絶景「ゴールデンブリッジ」
30キロも続くビーチに立ち並ぶリゾートホテルや、安くておいしいシーフード。竜の口から炎が噴き出す「ドラゴン橋」のショー。
約50年前のベトナム戦争時は米軍の一大拠点だった激戦の地は、いまや世界中の人たちが訪れる大人気の観光都市だ。なかでも中国人観光客は増え続け、2017年には年間60万人を記録。最大の「お得意様」なのだ。
だが中国人客が殺到するなかで「ゼロドン・ツアー」という観光のかたちが広がってしまった。「ドン」はベトナムの通貨。「地元に落ちるお金がゼロだから、こう呼ばれるようになった」と市役所にあたる「市人民委員会」観光局のグエン・スアン・ビンが説明してくれた。
要するに、中国とベトナムの一部の業者による中国人客の囲い込みだ。3日間で数万円ほどの低価格ツアーで中国から客を呼び、専用の土産物店などに連れ込み、割高な商品を買わせて利益を生む仕組み。
中国人が経営に関わる店にしか行かないため、地元で人気の食堂などを訪ねる機会はないばかりか、押し売りで嫌な思いをする客もおり、「悪印象しか残さない」という。
こういう中国人専用の土産物屋に別の都市で入ったことがあるが、魅力的とはいえない宝石や金・銀製品がケースに並び、ベトナムなのに客と店員が中国語でやりとりする、異様な雰囲気だった。
中国人客を増やそうと腐心する観光都市の顔の一方で、ダナンには中国との「南シナ海問題」の最前線という別の顔もある。海に面した通りに昨年オープンした「西沙諸島博物館」を訪ねると、日本企業が設計した建物の正面に、ベトナム国旗がでかでかと描かれていた。