京アニ映画「Free!」満席大盛況も…上映館が増えない事情
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190802-00000009-nkgendai-ent
35人が死亡、33人が負傷した京都アニメーション(京アニ)の放火事件から2週間が経過した。
放火事件の犠牲者数としては平成以降最悪という何とも悲惨な事件。そんな逆境にも負けず、同社が製作した公開中の映画「劇場版 Free!-Road to the World- 夢」が劇場を賑わせている。
「公開4週目で興行収入は3億円を突破。全国で73スクリーンという上映規模から考えると大健闘」(映画興行関係者)という数字が裏付けるように、いずれの劇場も満席状態で、見たくても見られない盛況ぶりだというのだ。
ネット予約の段階で、売り切れが続出。日刊ゲンダイ男性記者がどうにかチケットをおさえることができたのは、ウオッチしはじめて1週間後のことだった。
訪れたのは、今月19日にオープンしたばかりの「グランドシネマサンシャイン」(東京・池袋)。7月下旬の平日昼過ぎの上映回だったが、ファンたちの熱気を肌で感じることとなった。
「Free!」といえば、TVシリーズが2013年に放送開始。個性豊かな美少年たちがさまざまな思いを胸に水泳に打ち込む姿を描き、女性を中心に人気を博しているアニメだ。当然、劇場に訪れる観客たちも男女比どころか、ほぼ女性だけといっても過言ではない。劇場は若い女性を中心としつつ、10代の高校生から40代くらいまで幅広い年代の女性で賑わっていた。男性は111席のうち、記者を含め3名程度。
作品はイケメンたちの鍛え上げられた肉体美や、そんな彼らの時に微笑ましく、時に熱いドラマなど、世の女性たちが夢中になるのも納得の内容だ。肝心の水泳のシーンでは、リアルな水の描写や躍動感のある泳ぎ姿など、アニメーションの作り込みに魅せられる。
上映開始直後、オープニングの段階ですでに目元をハンカチで押さえている観客もおり、また、終演後は鑑賞者それぞれが思い入れのあるシーンや、キャラクターたちについて語り合いながら劇場を後にする姿が。ファンたちの「Free!」というコンテンツに対する熱量の高さがひしひしと伝わってきた。
1人でも多くの観客がストレスフリーで劇場で鑑賞できるよう、もっと上映回数を増やせばと思ったが、コトはそう簡単ではないようだ。
「今年の夏休み興行、なかでもアニメは新海誠監督の『天気の子』を筆頭に近年まれにみる充実ぶりで、続々と粒揃いの作品が公開されている。そうなると、映画館としては物理的に7月公開の『Free!』の上映回数を増やすのは至難の業。
しかも、上映を安易に増やすようなことをすれば、事件後の便乗商法を狙ったかのような風評が立つことへの不安も少なからずあります。さまざまな要因が重なり、現状維持のスタンスになったといえるでしょう」(前出の映画興行関係者)
国内外から京アニへの寄付金は13億円を突破。もっとも社員への補償なども含め、再建には100億円以上が必要ともいわれる。作品同様、京アニの正々堂々を貫く“スポーツマンシップ”に一層の応援が寄せられるはずだ。