吉本興業が提出を求めていたのは、9月9〜11日に静岡県掛川市で同社が主催する「NSCお笑い夏合宿」に
参加するための誓約書。合宿費用は税込み4万500円で、参加を申し込む場合、同社が示す「規約及び
注意事項」について、「私の保護者も含めて熟読、十分に理解したうえで参加する」と記された誓約書に署名し、
提出するよう求めている。
その「規約及び注意事項」では、合宿の費用や持参物とともに、15項目の順守事項を列挙。時間厳守や飲酒、
喫煙の禁止などのほかに、「合宿中の負傷、これに基づいた後遺症、あるいは死亡した場合、その原因を問わず
吉本興業に対する責任の一切は免除されるものとする」との免責事項を組み込んでいた。
さらに、こうした傷害については「賠償請求、訴訟の提起などの支払い請求は行えないものとする」とも記載。
こうした内容を含む規約について、「遵守(じゅんしゅ)しない者は、強制送還や退学処分となる場合もある」
としている。
一般的に、契約時に免責事項が設けられることはある。だが、2001年に施行された消費者契約法は、
たとえばイベントの主催者の不法行為で生じた損害の責任をすべて免除するような条項は無効だとしている。
消費者問題に詳しい紀藤正樹弁護士は「書く必要のないことが記載されている。今の法制度にのっとらない、
人を人として扱わない規約」と指摘。「訴訟ができない」ことについても、「憲法で認められた裁判を受ける権利を
放棄させようとする内容だ」と問題視する。
吉本興業によると、今年の合宿の規約のほかに、少なくとも14〜16年に実施した合宿の規約にも、
こうした内容が含まれていた。大崎洋会長が社長に就任した09年にコンプライアンスやリスク管理の
強化方針が打ち出され、免責範囲を広めるような内容にしたという。
しかし、3年前に顧問弁護士の指摘を受け、「責任の一切は免除される」などの記載を修正したという。
今年の規約に記載されていることについては、「今年になって担当者が代わり、引き継ぎがうまくいかずに
修正前の規約を渡してしまった」としたうえで、「生徒と親御さんに与えた不信感を払拭(ふっしょく)できるよう
説明していきたい」と謝罪した。
同社は合宿の内容について、「プールで大喜利をしたり、ギャグで競い合ったり、罰ゲームはおかずの一品を
減らす程度で、命の危険はない」と説明している。
https://www.asahi.com/articles/ASM7Z3F1VM7ZUTIL00H.html