■昭和を引きずった「定時」の定義
もう一つ、身近な例を挙げてみましょう。私の知人の男性は、育児のために頻繁に定時帰りをしていました。するとある日、女性の上司から
「定時で帰り過ぎ」と怒られたそうです。本来なら、定時帰りする人とは“普通”の時間に働き終えて帰宅する人のこと。しかし、
その上司は“最低限”の時間しか働かない人、と捉えていたようです。
1日の労働時間は法律で定められていますから、会社にはそれにのっとった制度もあるはずで、上司も知っているでしょう。ただ、
それは建前上の制度として知っていたにすぎず、本音では定時=最低限と考えていたわけです。
この2つの例からは、日本の建前社会の気持ち悪さが見えてきます。口では男性の育児参加や残業削減をうたっていますが、
本音は「男は家庭の都合で休んだりせず長時間働くべき」なのではないでしょうか。企業やそこで働く人たちの建前と本音の間に、
今、大きなズレが生じているのです。
昭和の高度成長期と令和の現代とを比べると、男らしさの像は大きく変わりました。しかし、日本の企業風土や企業文化はまったく
変わっていないように思えてなりません。変わったのは建前だけであり、本音の部分ではまだまだ昭和を引きずっていると言えるでしょう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190724-00029371-president-bus_all