首相は今回の選挙で、憲法論議の是非を争点に据えた。
「憲法について議論する政党」が選ばれたとして、改憲論議を加速する可能性がある。

改憲勢力は3分の2に届かなかったが、首相は昨晩のテレビ局のインタビューで、野党の国民民主党の名前を挙げ、議論に前向きな議員に協力を呼びかけていく考えを示した。

しかし、有権者が一票に託す思いはさまざまであり、今回の選挙結果をもって改憲にゴーサインが出たと受け止めるのは乱暴に過ぎる。

思い起こすべきは、3年前の参院選だ。改憲勢力が衆参両院で3分の2に達したにもかかわらず、その後、改憲機運は高まらなかった。

自民、公明、維新の3党をひとくくりに改憲勢力としても、それぞれの思惑や重視する項目は異なっている。
いま改憲論議を進めることに、世論の強い後押しがあるわけでもない。

選挙戦中の本紙の世論調査では、改憲勢力が3分の2以上を「占めない方がよい」が40%、「占めた方がよい」が37%と拮抗(きっこう)した。

首相はきのう、憲法改正について、再来年秋までの自民党総裁の残り任期中に「なんとか実現したい」と語ったが、
内政・外交とも難題が目白押しのなか、首相個人の思い入れで強引に議論を進めることは、社会に深刻な亀裂をもたらすだけだ。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14107526.html