「西方世界」の資格問われる韓国 東洋学園大学教授・櫻田淳

(略)故に、日韓確執のさまざまな局面において日本が正面切って韓国に対抗して
何かをしようとすれば、それ自体が「『格下の国』である日本が『格上の国』で
ある韓国に楯突いて来るのは、許し難い…」という激越な反発を招くだろう。
此度の措置発動に際し、「韓国に鉄槌を下した…」という類の反応や説明は、実は
全然、賢明ではないのである。
 それならば、日本の対応は、どのようにあるべきか。筆者は、「韓国を相手に
しようとするのであれば、韓国を相手にしようとしてはならない」が一つの原則で
あろうと考えている。

 それは、日韓関係に絡む案件を日韓関係の狭い文脈では語らないという姿勢が
大事であるという意味である。日本政府は此度(このたび)の措置発動を安全保障
案件として説明する以上、それを徹底させることが肝要である。韓国は安全保障上、
日米豪3国や西欧諸国のような「西方世界」同盟網を支える国家としての信頼に
足るのかが、事の本質である。
 事実としては、特に文在寅大統領登場以降の韓国は、米韓同盟の枠組みの下で
着けていた「西方世界」国家としての「仮面」を外し、「上下秩序」意識に結び
付いた「中国文明」国家としての「素顔」をあらわにしている。何よりも同胞意識を
反映させた対朝融和姿勢、そして「上下秩序」意識を反映させた対日軽侮姿勢は、
そうした「素顔」の証しである。
 京都大学教授だった高坂正堯氏は、安全保障の目標が、「その国をその国たらし
めている諸制度、諸慣習、常識の体系を守る」というものであると指摘した。当代
日本では、法の支配(国際法の順守)は、その「常識の体系」に含まれる。高坂氏が
指摘したように、安全保障で意味するものが、単なる「軍事」や「経済」に絡む
ものではなく、「常識の体系」、すなわち「価値」や「理念」に絡むものも含む
のであれば、法の支配(国際法の順守)という「価値」に絡んで確執を深めた韓国は、
安全保障上の「友好国」ではないと判断されても、仕方がないのであろう。
(続く)