和食に合うウイスキーへ試行錯誤 調合に自信得る
サントリースピリッツ 名誉チーフブレンダー 輿水精一氏(6)
2019/7/5
https://style.nikkei.com/article/DGXZZO46790130R00C19A7000000/?page=2
商品化までには社内で曲折があった。
スギ樽の原酒を何としても生かし切ってやろうと意気込んではいたものの、何しろ個性が強くどう使いこなすか苦労した。
開発部門の担当者はスギ香の魅力を前面に出してほしいと思う。一方でマーケティングの担当者はそれだとクセが出すぎて消費者に受け入れられないと言う。
双方の意をくみつつ何度も試作するが、いつまでたってもこれでいこうとはならない。
発売日も決まり、包装材の準備も整っているのに、肝心の中身ができていない。期日が迫り、各現場にはすぐ生産できるようスタンバイしてもらった上で、香味を最終決定する会議が設定された。
3種類の試作品を提案したが、結論が出ない。
もう少し違うものを作ってほしいとの要望が出たため、会議は明日に再開しようとなりかけた。その時にちょっと待ってくださいと言って、自分が最もおいしいと思う試作品を出してみた。
すると「これでいいじゃないか」となった。あっけないほどだった。自らの感覚を信じた調合でぴたっと決まったこの瞬間にブレンダーとしてやっていけるかなと思った。
こうして生まれた「膳」は初年度に40万ケースが売れ、新ブランドとしては異例の記録となった。
1000円ほどのウイスキーとしてはぜいたくなつくりをしたのも功を奏したかもしれない。
手掛けた商品が売れれば励みになるし、自信もつく。それまでの努力が認められたのか、99年に4代目のチーフブレンダーへ昇格した。
https://youtu.be/M_1UZlPBYzM