日本の報道では、影響は韓国の方が圧倒的に大きく、
韓国の経済が立ち行かなくなるといった見方が多い。実際、いくつかの韓国の有力紙も、
経済的影響を懸念して韓国の文在寅大統領の方針に批判的な見解を発表した。

 ただ、その一方で、韓国のツイッターやブログに目を向けると、
日本の主要メディアの見方とは大きく違った様相が見えてくる。経済産業省の今回の措置を「歓迎」する声が実は多いのだ。

 具体的には、「これらの材料を製造するのは難しくない」
「文政権は半年前から、この事態を予想して、これらの材料の製造準備を始めている」
「規制された材料を韓国で内製すれば、日本に対する貿易赤字を減らせる」
「現代の真珠湾攻撃。勝つのは我々」――といった声があふれている。

材料の製造メーカー候補が続々
 ナショナリズムから空威張りしているだけ、と見ることもできるが、韓国側にこれらの
材料を製造する能力がないとも言えないようだ。ツイッターなどでは、その根拠として、
3材料を製造できる可能性のある企業名がいくつか挙げられている。例えば

SKCKolonPIはその社名から分かるように、ポリイミド(PI)の製造が本業のメーカー。
Foosungは、Liイオン2次電池向け電解液材料である六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)や、
フッ化水素と並んで半導体の製造に用いられる三フッ化窒素(NF3)を製造するメーカー。
日本国内でフッ化水素を製造するメーカーは、やはりこれらを製造しており、技術的な距離が近いといえる。
2019年7月3日、Foosungの韓国市場での株価は一時、前日比10%も跳ね上がった。

「特別優遇がない2003年までの状況に戻っただけ」(ある日本の識者)という見方もある。し
かし、韓国の企業の技術力は2003年当時とは比較にならないほど高い。ソニーなど
日本のメーカーが最初に開発した有機ELディスプレーが、今や韓国メーカーの主力製品になっているのも、
韓国の技術力への油断があったことが背景にあるとの指摘がある。

 今回の経済産業省の措置は、国内外で「経済的な真珠湾攻撃」などと例えられているが、
“効果”があるのは、これらの韓国企業が代替材料を開発、製造するまでの間に限られる。
政府間の対立が長期化すれば、約80年前の真珠湾攻撃がそうだったように、
日本も深刻な影響を被りかねない。具体的には、内製を果たした韓国メーカーが世界市場でも席巻し、
日本メーカーが誇っていた材料の高い市場シェアをみすみす失いかねない。
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02512/?P=3