6月20日、福井県永平寺町の繊維工場で火災が発生し、4人の遺体が見つかった。そのうちの1人はベトナムから来た
21歳の女性だったと福井県警察が後ほど発表した。彼女は技能実習生で、この工場では18人の外国人技能実習生が働いていた。
6月24日、NHKが放送したドキュメンタリー番組「ノーナレ」において、縫製工場で働くベトナム人技能実習生たちの過酷な労働現場が放映された。
直接的な表現は控えられていたが、愛媛県の今治タオルにかかわる企業と推測されるような番組構成になっており、
その後、SNSでは臆測を交えた無関係な工場への批判、不買運動など反響が広がっている。
(中略)
繊維産業で最も事態が深刻な理由
実は技能実習制度における不正行為は、繊維や衣服関連の産業に目立つ傾向がある。経産省が昨年設置した繊維産業技能実習事業協議会によると、
2017年に実習生に対し長時間労働や賃金不払いなどの不正行為のあった183機関のうち、「繊維・衣服関係」は94機関と過半を占めている。
この背景には過剰供給と単価下落が同時に進む、過酷な市場環境が挙げられる。日本では1990年代以降、
ファストファッションの流れに対応し、安く大量に生産できるラインが次々と海外に移行。
衣服の国内生産率は現在3%程度にまで減少した。
経済産業省の報告によると1990年では約15兆円だった国内の衣料品市場規模は、2010年には約10兆円に縮小。
その一方で同時期の国内供給量(国内生産と輸入の合算)は、約20億点から約40億点へ倍増し、
国内での供給単価は20年間で3分の1にまで下がった。さらに総務省の家計調査によれば、20年間で各家計の衣料品購入単価は
6割弱までにしか下がっておらず、市場に供給されたものの消費されない衣料品が相当量あると推測される。
このような状況下、限られた国内工場は海外よりも短い納期での高品質な製品生産や、めまぐるしく変わる市場のトレンドへの
柔軟な対応が求められるようになった。その結果事業所の小規模化が進み、経産省によると2016年時点で国内縫製事業所のうち、
従業員数29人以下の事業所が9割以上を占めている。
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https://toyokeizai.net/articles/-/290025