成年年齢になっても実家を離れず、子ども部屋で暮らす「子ども部屋オジ(オバ)さん」が増えている。
「どうすれば、家を出て自立してもらえるか?」という悩みを抱える親も少なくない。そこで今回は、
わが子を「子ども部屋オジさん」にさせないための親の心得についてお伝えしよう。(エッセイスト 鳥居りんこ)

● 子ども部屋に住み着いている人は どれぐらいいるか?

 筆者が思う「子ども部屋オジ(オバ)さん」の条件は次の3点である。

(1)親と実家で同居
(2)子ども部屋居住中
(3)3種の神器は子ども時代からの学習机・ベッド(布団)・本箱

 「親と同居の未婚者の最近の状況(2016年)」という総務省統計研究所の西文彦氏の調査によれば、実家暮らしをしている独身者は、35歳から54歳までで実に446万人もいるという。
 収入はあるのに結婚をせず、実家暮らしを続けている方は筆者の周りにもたくさんいる。各々で様々な理由があるだろう。
その一方で、筆者は彼らの親から複雑な心境を吐露されることもあり、この国の子育ての難しさを痛感している。
 もしも今、あなたが「子ども部屋オジ(オバ)さん」の親であるならば、自身が子どもの魂を「玉手箱」に入れて厳重管理していないかをチェックしてみてほしい。

● 「子ども部屋オジさん」 親子の共通点

 とはいえ、筆者は複数の「子ども部屋オジ(オバ)さん」親子を見ていて、ある共通点に気づいた。
 それは「親子で竜宮城に滞在中」ということである。つまり「時の経過の実感が親子ともに薄いのではないか?」という疑念を持っているのだ。
 誰もが知る「浦島太郎の玉手箱」。一説によると、玉手箱の「玉」は「魂」の「たま」なのだそうだ。
 子どもを手放したくないがゆえに、親が作り上た“玉手箱”という家では、やがて親子で“共依存”関係となってしまい、お互いに身動きが取れなくなるのだ。
 再び、動き出すのは玉手箱が開いた時、つまり、老いた親が亡くなった後である。その時にはじめて子ども自身も年老いていることを実感するのだとしたら…。

● 「子ども部屋オジさん」化を防ぐ 親の3つの心構えとは

 マイナビが2015年に実施した「社会人500人に聞いた“大人の条件”」の上位3つは、以下の通りであった。
・経済的自立
・他人を思いやることができる
・結婚し、子どもができる

 筆者が個人的に思う“大人の条件”は、次の3点だ。

・経済的自立
・精神的自立
・生活的自立
 
 多くの「子ども部屋オジ(オバ)さん」には、この中の“生活的自立”が不足している。

 最後に「竜宮城」から子どもを追い出した母の事例を紹介しておこう。

 幸子さんの息子は当時30歳。年収が低いこともあり「子ども部屋オジさん」になっていたという。

 ある日、幸子さんは映画「キタキツネ物語」を見て思った。

 「狐だって子別れする」

 そこで期限を告げ、「学習机の撤去」から始めたそうだ。そして1年後、賃貸物件の初期費用を貯めさせた上で、実家から息子を追い出した。

 それから5年が過ぎた。幸子さんには最近、孫ができたと聞いている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190625-00206234-diamond-soci