<社説>県外の軍用地主増加 分断を防ぐ対策が急務だ
「新たな基地問題」と位置付け、真剣に向き合う必要がある。人々の分断や、まちづくりの遅滞を招く恐れがあるからだ。
県内の米軍基地用地(軍用地)で国と賃貸借契約を結ぶ所有者のうち県外居住者の数が6年間で1・44倍に増え4千人を超えた。
統計開始以来6年連続で増え、最新の2018年度は軍用地主全体の9%を占め、1割に迫っている。
地主が高齢化し、県外や国外に住む親族への相続・贈与が進んでいる。一方で地主全体の数は年によって増減が見られるものの、18年度にかけて県外在住者の数が大幅に伸びている。
これは、かつてない低金利環境の下で「安定資産」として投資目的の軍用地購入者が増えていることが主な要因とみられる。
県内の米軍用地を巡っては、1945年の沖縄戦後、米軍による強制接収を経て、地代を安価な一括払いで済ませようとした米軍の方針に住民が激しく抵抗した島ぐるみ闘争の歴史がある。
そうした権利獲得闘争の結果、現在の地料に至った経緯がある。それでも土地提供を拒む未契約者、いわゆる反戦地主はいまだに少なくない。
政府による軍用地料の高額化はそんな地権者や地元住民の反発に応える側面があった。
基地周辺の経済発展の恩恵を受けられない機会損失への補償の意味合いもある。いわば基地負担が大きい地元住民の権利主張を考慮したものだ。
しかし基地負担を負わない県外在住者が投資目的でその恩恵を受けることは、それらの意味合いから乖離(かいり)していると言える。
米軍機の爆音や米軍絡みの事件・事故など基地被害を日常的に受けている地元住民は不公平感を強めるに違いない。
地権者間で分断が生じる恐れもある。基地の返還が決まった後の跡利用構想について、距離や意識の差から県外地権者の同意を得られず、まちづくりが遅れる可能性は否めない。
今回の統計結果は、その可能性がより強まったといえ、県民全体にとって放置できない課題を突き付けている。
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琉球新報紙面
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