相次ぐ交通事故、高齢者は車の運転免許証を返納すべきなのか
近年、高齢者の運転による車の交通事故は増え、そのたびに「高齢者は自主的に運転免許を返納しましょう」という主張がマスコミに取り上げられているのを目にします。
しかし、私はこの主張について疑問を持っています。
高齢者であっても、自分の現状を自覚して運転していれば、とくに事故の危険性が増加するわけではないと考えています。
実際、75歳以上の高齢者より16〜24歳の若者のほうが事故は多いのです。それより、免許を返納して外出しなくなることで、認知症を発症したり、進行させてしまうことを恐れます。
高齢者の事故で、よく「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」ことが原因とされますが、「ブレーキとアクセルを踏み間違える」というのは、認知機能の問題というよりも、
運転技術の問題であったり、何かのきっかけで「パニック状態」に陥ってしまったことが原因と考えられます。いったんパニックになったら、若い人でも同じようなことが起こり得ます。
現在、運転免許の更新時に75歳以上となるドライバーには、認知機能検査が行われています。ただし、この検査は「日常生活での認知機能」を検査するもので、
「運転技術」の検査にはなっていません。実際、2018年に交通死亡事故を起こした75歳以上のドライバーの約95%は「検査の結果、認知症ではない人」だったのです
(2019年3月警察庁発表による)。つまり、自動車の運転には、認知機能の低下だけに着目するのではなく、「運転技術」そのものをチェックする必要があるのではないでしょうか。
もう一つの問題は、このところ「自転車の事故」が急激に増えていることです。自動車の運転免許を返上した高齢者がやむを得ず自転車に乗るという傾向もあって、
自転車事故が増えているようです。高齢者が自転車で転んで、ひどい骨折でもしたら、その後、それまでのように歩くことが困難になり、最悪の場合、
寝たきりとなってしまうリスクが大きいのです。さらに、公共交通機関があまり整っていない地方では、運転免許がないと日々の買い物にも不自由します。免許がないということは、
「食」をはじめ、生活の質に直接響いてしまいます。また本人や配偶者が病院に通う手段が奪われるという問題も生じます。
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