さて『日本国紀』の事実誤認に関する指摘が相次ぐようになると、百田氏は「アンチは12章と13章と終章には、
ほとんど何も言いません。実はこの最後の3つの章こそ、『日本国紀』の神髄なのですが」と言い出した
(2019年1月5日のツイート)。

第12章以降の記述は、GHQによる日本人の「洗脳」と『朝日新聞』の「偏向報道」と左翼勢力の暗躍を
批判するものである。これらをテーマにした本は、ケント・ギルバート氏の『まだGHQの洗脳に
縛られている日本人』(PHP研究所)、同『マスコミはなぜここまで反日なのか』(宝島社)など、
いくらでもある。要するに第12章以降だけを本にしても、類書が多いため、大した売り上げを見込めない。

俗にネトウヨ本、ヘイト本などと呼ばれる著作群は、中韓や『朝日新聞』が嫌いな固定客にしか売れない。
下品なタイトル、扇情的な帯、毒々しい装丁を持つこれらの本は、普通の社会人にとっては人前で
開くことすら憚られる。これに対し『日本国紀』は、荘重なタイトルといい、格調高い装丁といい、
書店に氾濫しているネトウヨ本とは外見上、一線を画している。『日本国紀』には教科書やウィキペディアに
載っているような通説的記述も多く(ただし先述の通りミスが散見される)、一見すると中立的で穏当な
「日本通史の決定版」に映る。しかし、そこに陰謀論的な説明や極端な政治的主張が混ざっているから
問題なのだ。私が数あるネトウヨ本の中で、特に『日本国紀』を批判するのは、このためである。

中央公論 2019年6月号
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幻冬舎・見城徹社長 “出版界のご法度”実売数晒し→批判殺到し炎上
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