脳に電気刺激を与えると高齢者のワーキングメモリが20代並みまで回復したという研究結果
年を取るにつれて物忘れがひどくなっていくというのは仕方のないことのように思えますが、
老人の頭部に電極を装着して電気刺激を与えることで、短い時間の間情報を保持して同時に
処理するワーキングメモリ(作業記憶)が20代並みまで回復したという研究結果が科学誌の
Nature Neuroscience上で発表されています。
今回の研究を行ったのはボストン大学のロバート・ラインハルト助教授とジョン・グエン氏で、
2人は高齢者の認知機能低下の主要因である「ワーキングメモリの欠損問題」に対する
アプローチの1つとして、電気刺激を与えるとワーキングメモリにどのような影響があるかを
測定する実験を行いました。電気刺激は前頭前野と側頭皮質の間の作用が効率化するように、
被験者それぞれに合わせてカスタマイズされたものです。電気刺激は頭部に貼り付けられた
電極から流れるタイプのもので、インプラントなどの手術を要しません。実験では、60歳から
76歳の老人42人と比較対照群の20代の若者42人に、画像を見せた後すぐに次の画像を見せ、
「2枚目の画像は1枚目の画像と同一なのか、異なっている部分があるのか」を答えるという
ワーキングメモリの能力を測る記憶テストを受けてもらいました。
電気刺激を与える前にテストを行ったところ、高齢者は80%の正解率でしたが、20代の若者は
90%の正解率でした。その後、高齢者には25分間電気刺激を、20代の若者には偽薬効果を考慮して、
「偽の電気刺激」を25分間与えました。電気刺激を与えた後に行われたテストでは、
高齢者と20代の若者の正解率はいずれも90%をマークし、電気刺激によって記憶テストの
結果が良くなるが、偽の電気刺激では結果が変わらないことが確認されました。
また、記憶力改善効果は電気刺激を加えてから約1時間持続しました。
https://gigazine.net/news/20190410-electrical-stimulation-fix-brain/