「改元」を考える 時はだれのものなのか


 スターリン時代の旧ソ連の強制収容所には、時計が無かったそうだ。
懲罰的な意味合いも含め、時間は収容所側が一方的に管理するものだった。

 歴史を振り返れば、多くの権力は、時を「統治の道具」として利用してきた。
 日本の元号も、「皇帝が時を支配する」とした中国の思想に倣ったものである。

1979年に現在の元号法が成立した際、元海軍兵士の作家、渡辺清は日記に書いた。
 「天皇の死によって時間が区切られる。、われわれは天皇の支配下におかれたということになる」
戦争という暗い過去と重なることで、拒否感を抱く人はいるだろう。

多種多様な時の流れを心得る、しなやかで複眼的な思考を大切にしたい。
 時を過ごし、刻む自由はいつも、自分だけのものだから。

https://www.asahi.com/articles/DA3S13942702.html