“天文学は軍事利用せず” 学会が声明も世代間で意見の違い

軍事利用につながる研究と科学者の関係が問われる中、日本天文学会は、「人類の安全や平和を脅かすことにつながる研究は行わない」とする声明をまとめました。
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ただ、防衛省の研究資金の制度については研究費が減る中、認めるべきだという意見や、世界情勢を考えると防衛には協力すべきだという意見が若い世代を中心にあったということです。
日本天文学会の柴田一成会長は「戦争への怖さや嫌悪感などのバックグラウンドが世代間で違いがあることが分かった。
平和を脅かすことにつながる研究かどうか、科学者はこれからも慎重に考えていく責任がある」と述べました。

「防衛省が研究資金」反対54%も若い世代は逆転も
日本天文学会は、防衛省が装備品の開発につなげるため大学などに研究資金を出す「安全保障技術研究推進制度」について、
去年秋、学会に所属する研究者など2829人にアンケート調査を行い、結果の一部を公表しました。
このうち、この制度について賛成か反対かを問う質問に対して、全体のおよそ28%にあたる800人が回答し、反対が54%、賛成が46%で反対が上回りました。
一方、年代別に見ますと、70代以上は反対が81%賛成が19%、60代は反対が72%賛成が28%、50代は反対が68%賛成が32%、
40代は反対が54%賛成が46%、30代は反対が48%賛成が52%、20代は反対が32%賛成が68%でした。
若い世代ほど防衛省の制度への賛成が増え、20代と30代では賛成が反対を上回りました。
賛成の理由については「昨今、基礎研究のための資金が減る中、趣旨を問わず、制度に応募できるようにすべきだ」という意見や、
「世界情勢を考えると防衛省が基礎研究を推奨することは当然だ」といった意見などがあったということです。
このほか、「学会のような組織が、個々の研究者の考え方を制限すべきではない」との意見も出たということです。
結果について、日本天文学会の柴田一成会長は「若い世代ほど、防衛省の制度に賛成が多くなることに驚いた。
科学者として軍事につながる研究かどうか、慎重に考えないといけない。今回のアンケートを詳しく分析するなどして、学会としても引き続き議論をしていきたい」と話しています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190316/k10011851121000.html