<社説>石垣陸自駐屯地着工 アセス踏みにじる蛮行だ
防衛省が1日、石垣市で陸上自衛隊駐屯地の建設工事に着手した。住民の理解が得られていない中での着工は、あまりに乱暴だ。
防衛省が建設着手に急ぐのには理由がある。県が昨年改正した県環境影響評価(アセスメント)条例の適用を回避するためだ。
アセス対象事業について、これまでゴルフ場や飛行場など特定事業に限定していたが「土地造成を伴う事業」は全て対象となった。このため基地施設の整備もアセスの対象に含まれたのだ。
駐屯地の建設予定地は平得大俣地区の約46ヘクタールで、さらに土地造成も実施する予定だ。明確に改正アセス条例の適用事業となる。
しかし条例では経過措置として本年度内の工事は対象から除外している。
防衛省はこの経過措置の除外に目を付けたようだ。今回、沖縄防衛局が県に通知した工事計画の面積は全体の約46ヘクタールのうち、わずか0・5ヘクタールだ。
本年度中にほんの一部でも工事に着手すれば、アセスの手続きを踏まなくて済むことになる。
防衛省関係者は「アセスは回避できたと考えている」と述べている。最短でも3年程度が必要なアセスの手続きを省くことで、工事を加速させたいのだろう。
国が定めた環境影響評価法1条にはこう記されている。
「土地の形状の変更、工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要である」
政府が自ら法で定めたアセスの重要性を踏みにじり、県条例のアセス逃れのために駆け込み工事をする。これが果たして法治国家のすることだろうか。
<中略>
あまりにも住民不在のまま基地建設を進めている。「島しょ防衛」という配備目的の中に、地元住民は含まれていないとしか思えない。
アセスの手続きを踏まない拙速な工事はただちに中止すべきだ。
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