総勢41人…保険金5千万円詐取も治療費でパー 犯行グループの顛末とは
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190124-00000503-san-soci

 ■実際に事故、むち打ちに

 グループは事を起こすにあたってあるルールを設けていた。決して「人身事故」にはせず、「物損事故」として届けるようにしたことだ。
物損で済めば行政処分も刑事処分も受けないが、捜査関係者は「人身であれば運転免許証の違反点数が引かれ、警察の調べが入る。そこを危惧したのではないか」と推測する。

 当初は、最初のケースのように別の場所で軽い事故を起こしておいて、それらしい「現場」に移動していた。
しかし27年4月以降は手口を変え、けがをするリスクを顧みず、信号待ちで停車中の車に追突したり、店舗の駐車場で車に接触したりと、実際に事故を起こすようになった。

 建設作業員の男は「同じような事故を繰り返していては、ばれると思った」と供述。捜査関係者は「嘘くさくならないよう、リアリティーを追求したのでは」と話す。

 ところが、これが裏目に出る。車を衝突させる際にスピードの加減が分からず、被害者役が本当にけがを負うケースが続出。中には深刻なむち打ち症状に悩まされ、バカにならない治療費を支払う羽目になったメンバーも。

 取り調べなどで、あるメンバーは「事故の瞬間は体を持っていかれないようにぐっとこらえていたが、シートに体を打ち付けてしまった。
ほんまに首が痛い。今も病院や整骨院に通っている」と嘆き、別のメンバーは「(報酬の)ほとんどは車の修理代に消え、パチンコ数回で全部なくなってしまった。割に合わなかった」とぼやいたという。

 ■損保会社から情報提供

 4年近くにわたる一連の事件が明らかになったのは29年3月、大手損害保険会社から「複数の事故に同一人物が関与している」と県警に相談があったのがきっかけだ。
交通事故などによる損害保険金の受給者は、損保業界で横断的に情報共有されており、類似事案での相次ぐ保険金請求に疑惑の目が向けられた。

 県警は損保会社から事故車両の写真を入手する一方で、メンバーの供述や携帯電話の通話履歴などから事件の全容を解明。
最終的に詐欺容疑で建設作業員の男ら17人を逮捕し、24人を書類送検。うち15人が起訴され7人が有罪判決を受けたほか、まだ公判中のメンバーもいる。

 建設作業員の男は「小遣いほしさにやった」と容疑を認めたという。メンバーの中には軽い気持ちで加わった者もいたようで、県警交通指導課の担当者は「詐欺を働いているという罪の意識が低かったのではないか。楽して金を稼ぐことはできない」とあきれ顔だった。