平和条約交渉の難しさを改めて浮き彫りにしたと言えよう。政府は揺さぶりに動じず、
確固とした戦略に基づいて協議を進める必要がある。
日露外相会談がモスクワで開かれた。安倍首相とロシアのプーチン大統領が、
河野、ラブロフ両外相を平和条約交渉の責任者に指名してから、初の協議だ。
歯舞群島、色丹島の2島引き渡しを明記した日ソ共同宣言を「基礎」として交渉を加速する、というのが首脳間の合意である。
両外相はこれを尊重し、着実に前進を図らねばならない。
だが、ロシア側の交渉に臨む姿勢は、甚だ疑問である。
ラブロフ氏は会談後、記者団に「第2次世界大戦の結果を日本が認めなければ、他の問題へ前進することは困難だ」と述べた。
北方4島は合法的なロシア領であると認めるよう、求めたものだ。
第2次大戦末期、旧ソ連は日ソ中立条約を一方的に破って参戦した。
その後、4島を不法に占拠した。歴史的事実を歪ゆがめるロシア側の主張は受け入れられない。
ラブロフ氏は、共同宣言の履行を怠ったのは日本だ、とも主張した。
日米安全保障条約の改定に反発し、「領土問題は解決済み」と変節したのは、ソ連である。
河野氏は会談後、「日本の考えは明確に伝えた」と述べたが、会談内容の詳細は控えた。
不当な主張には、毅然きぜんと反論することが大切だ。政府には、
領土問題に関する正確な史実を内外に説明することが求められる。
ラブロフ氏の発言には、交渉を優位に運ぶ狙いがあるのだろうが、過去の経緯を巡る議論を続けることは、不毛ではないか。
両外相は平和条約に関し、島の返還の進め方や周辺海域の扱い、ロシア住民の処遇など、多岐にわたる課題について詰める必要がある。
真摯しんしに協議し、一致点を見いださなければならない。
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