「ハッピーハロウィーン!」。笑顔の男たちに手招きされ、仮装した親子が重厚なシャッターをくぐっていく。程なく子どもらが、菓子の袋を抱えて外に出てきた。周囲では警察
官が目を光らせ、菓子を受け取らないよう呼び掛けている。
10月31日、指定暴力団山口組が総本部(神戸市灘区)で開いたハロウィーンのイベント。その異様な光景にあぜんとした。
山口組はほぼ毎年、住民らに菓子を配っている。「友達と行きたがる子どもを止められなかった」。ばつが悪そうに語る親がいる一方、「子どもが菓子をもらうのは自由」「菓
子を配るくらい、いいじゃない」との声も。ネット上では、逮捕者が続出した東京・渋谷のハロウィーンと比べ「山口組の方がまし」とする書き込みも並んだ。
本当にそうだろうか。渋谷の出来事は非難されて当然だが、山口組とはことの本質が違うはずだ。兵庫県警は菓子の配布を、暴力団追放運動に参加させないための懐柔策とみる
。何より、菓子の代金がどう捻出されたかを考えてほしい。
暴力団による詐欺や恐喝などの事件は後を絶たない。誰かをだまし、脅して得た金が菓子に化けた可能性がある。なぜ大勢の警察官が並んでいるのか。大人の責任として、その
意味を教えてあげてほしい。
ハロウィーンは、日本でもイベントとして定着してきた。子どもたちの仮装はほほ笑ましいし、参加させたくなる親心も分かる。楽しみにしている子も多いだろう。そんなこと
を見透かした思惑や、悪のりの騒動に子どもたちを巻き込まないで、と願う。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201811/0011835825.shtml