■平等になるほど他人に厳しくなる
そして書いたのが『アメリカのデモクラシー』(第1巻は1835年、第2巻は1840年)という有名な本です。この本の中でトクヴィルはおおよそ次のようなことを言っているのです。
これまで貴族は、世の中の貧しい連中を自分と違う種類の人間と思ってきた。貴族は貴族、平民は平民で、まったく違う人間だと思っていた。でも自分自身がアメリカに
来てみて、そんなことはないと気づいた。みんな同じ人間で、自分と何が違うわけでもない。これまで人々を囲っていた想像力の壁は急速に崩れつつある。もう貴族だ、
平民だという時代ではない。世界はどんどんつながっていくし、人々はどんどん平等になっていく。
ただし、それが良いことばかりではないとトクヴィルは言います。みんなが互いを自分と同じ人間であると考え、その意味でより平等になることは、もちろんそれ
自体として良いことです。でも、そのような意味での平等化が進むと、互いの見方にも変化が生じます。
昔は平民というと、「ああ、貴族の人は偉いものだなあ。でも、自分とは違う人なのだから、自分は自分でやっていこう」と思うこともできた。ところが、みんなが
平等になるとどうなるか。いままでは違う世界の人だと思っていたのが、考えてみれば同じ人間だと思ったとたんに腹も立ってくる。「なんであの人はあんなに
いい思いをしているのに、自分はこうなのか」。平等化時代の個人は、他人に対してより厳しい見方をするとトクヴィルは言うのです。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181116-00026692-president-soci