(社説)姉妹都市解消 原点に立ち返り再考を

 異なる文化や価値観に触れ、相手を理解しようと努めつつ意見を交わす。それが国際交流だろう。
自らの考えが受け入れられないからと自治体間の関係を断ち切ることは、交流の意義を否定する行為と言うしかない。改めて再考を求める。

 大阪市の吉村洋文市長が先月、60年余りに及ぶ米サンフランシスコ市との姉妹都市関係を解消すると発表した。

 サンフランシスコ市は昨年11月、民間団体が建てた慰安婦像を市の所有とした。像の碑文には「旧日本軍によって性奴隷にされた数十万人の女性」「ほとんどが戦時中に捕らわれの身で亡くなった」との表現がある。
吉村市長は「歴史的事実として確認されていない」と指摘し、関係解消の方針を示しつつ市有化の撤回を要求。期限とした9月末までに回答がなかったとして、解消を書簡で通告した。

 元慰安婦の総数は研究者で見解が分かれ、被害の実相も場所や時期によって一様ではない。市長自身の見解を相手に伝えることは大切だが、その受け入れを友好関係の条件にするのは疑問だ。



 サンフランシスコ市長は声明で、両市の人々が長年続けた関係を一人の市長が一方的に打ち切ることはできないと訴える。吉村市長は耳を傾けてほしい。

https://www.asahi.com/sp/articles/DA3S13754056.html