東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣三人の
公判が三十日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれた。事故当時の最高責任者だった
勝俣恒久元会長(78)が初の被告人質問に臨み、業務執行に関する会長の職務権限について
「ない」と否定。「社長の求めで助言することはあったが、業務執行はすべて社長に譲っていた。
各部に直接関わることはなく、指揮する立場にない」と強調した。
公判の最大の争点は、大津波を予測できたかどうか。東電の子会社は二〇〇八年、
国の地震予測「長期評価」を基に最大一五・七メートルの高さの津波が原発を襲うと試算。
勝俣元会長は同年六月、社長から会長に昇格しており、試算に対する認識が焦点になっている。
昨年六月の初公判では「津波や事故の予測は不可能だった。刑事責任はない」と無罪を
主張していた。
勝俣元会長はこの日の被告人質問で、弁護人から社長の職務権限について問われると、
取締役会などで最重要案件を決める権限があるが、組織が巨大だとして「すべてを
直接把握するのは不可能に近い。権限を各部長らに付与し、それが果たされているか見る
役目だった」と説明した。
被告人質問の冒頭では、「事故で亡くなられた方、遺族の方、ご迷惑を掛けた地域のみなさまに
大変申し訳なく、社長と会長を務めた者として深くおわび申し上げます」と謝罪した。
武藤栄元副社長(68)、武黒一郎元副社長(72)は被告人質問を終えており、最後に登場した
最高責任者の認識が注目されていた。
武藤元副社長は自身の被告人質問で、〇八年六月、原発敷地を越える最大一五・七メートルの
津波の試算の報告を受けたが、同年七月に外部機関に試算方法を調査委託する方針を決めたと
説明。「先送りと言われるのは大変心外だ」と述べていた。武黒元副社長も外部機関への
調査委託について「いいと思った」と、武藤元副社長と同様の判断をしたと証言している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018103002000289.html