[書評] 自衛隊の“闇組織”の全貌とは?
2018/10/19

著者の石井暁氏は共同通信の記者(現在は編集局編集委員)として、
1994年から防衛庁(現・防衛省)を担当。そして2008年4月、
ある自衛隊幹部との懇談中に、「ベッパン」という聞き慣れない組織名を耳にする。

以来、5年間かけた調査や取材を経た2013年11月28日、石井氏はある記事を配信する。
その記事の要点を以下にまとめておこう。

(1)陸上自衛隊には「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(以下、別班)と呼ばれる
  組織図にない秘密情報部隊が存在する。
(2)数十人いるメンバー全員が陸自小平学校の「心理戦防護課程の修了者」である。
(3)冷戦時代からロシア(当時はソ連)、中国、韓国、東欧などに拠点を設け、
  身分を偽装した自衛官が情報活動を行っている。
(4)自衛隊はこの活動を首相や防衛庁長官にも知らせずに独断で行っており、
  文民統制(シビリアン・コントロール)を大きく逸脱する行為である。
(5)別班の活動資金に関して予算上の処理等が不明確である。
(6)別班は「米軍と密接な関係にある」と指摘する関係者が多い。

本書によれば、別班はロシア、中国、北朝鮮およびその関連諸国の情報収集を目的に、
ヒューミント(人を媒介にした諜報活動)を行うチームだ。
国内で対象と接触することもあれば、海外で民間人もしくは外務省などの
公務員を装って諜報活動を行うこともあるという。

別班メンバーの掟は、身分は明かさないことを前提に、交友関係は絶つ、
公的な場には行かない、年賀状は出さない、防衛大の同期会には行かない、
自宅に表札は出さない、通勤ルートは毎日変える、身分証明書は
身につけずに自宅に保管など、さまざまにあるという。

2013年の記事発表は、著者にとっても勇気のいる行動だった。発表前にある自衛官からは、
(別班を記事にするなら)「あなたを消すくらいのことはやる」と脅され、発表後には
別の自衛官から、「最低限、尾行や盗聴は覚悟しておけ」
「ホームで電車を待つときは最前列で待つな」と警告されたという。

(抜粋)
https://ddnavi.com/review/494785/a/