約200年前の江戸時代、多摩地域を舞台にした不思議な「生まれ変わり物語」が、江戸市中や京都で話題になった。
歴史的な記録も残っている物語を調べてきた市民有志が14日、日野市の高幡不動尊金剛寺で講演会などのイベントを開く。 (松村裕子)
物語の主人公は、中野村(現八王子市)で生まれた小谷田勝五郎(こやたかつごろう)。
八歳になったとき、自分は「程久保村(現日野市)の須崎藤蔵(とうぞう)の生まれ変わり」と、突然言い出した。
藤蔵は六歳で病死したが、魂が抜け出し、あの世で「三年たったから生まれ変わるのだ」と言われ、
勝五郎の生家に連れて来られた、とも説明した。
約五キロ離れた程久保村を訪ねたところ、勝五郎は知らないはずの道を進み、藤蔵の生家を言い当てた。
家の中の様子や父母の名は話した通りだった…。
国学者平田篤胤(あつたね)らが勝五郎からの聞き取りを本にまとめ、大評判に。
明治になって小泉八雲が「勝五郎の転生」という本を書いて海外に紹介した。
日野市郷土資料館によると、勝五郎(一八一五〜六九年)も藤蔵(一八〇五〜一〇年)も実在した。
しかし最近は八王子でも日野でも、物語はあまり知られていない。
資料館は市民に呼び掛け、二〇〇六年に物語の探求調査団を発足させた。
勝五郎の誕生日で、生まれ変わった日でもある十月十日前後に、成果を報告する講演会を開き、今回が十回目。
調査団代表で多摩市に住む朝倉海玄さん(84)は「地域おこしの一役を担えれば」と話している。
十四日は午後一時半から五重塔地下ホールでイベントが始まり、二時から会員の今野秀和・大東文化大講師が講演。
同寺の藤蔵の墓や記念碑も案内する。無料で当日直接会場へ。問い合わせは資料館=電042(592)0981=へ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201810/CK2018101302000139.html