ごみ収集車に乗ると、どんな景色が見えるだろう。最近、わが家のごみ出し担当になった記者(62)が「集める側」に回ってみた。
ルール無用の違反ごみがあれば、独り暮らしのおばあちゃんの玄関先にそっと置かれた小さなごみ箱あり……。ごみから見えた「まちの社会学」。
暑くても長袖作業衣
ごみ収集車への体験同乗をお願いしたのは、9月上旬。東京都練馬区の練馬清掃事務所から車に乗り込んだ午前8時過ぎには、もう気温が26度を超えていた。
しかしこちらは、ガラス片などから身を守るため、長袖の作業衣にヘルメット、つま先が1トンの落下物でも耐えられる特殊靴に身を包む。分厚いゴム手袋の内側にはすでに汗が。
最初の現場はマンションのごみ置き場だ。管理人のおじさんが、20個ほどのごみ袋を整然と並べ、待ち構えていた。この道25年の技能主任、中村義宣(よしのぶ)さん(44)は片手に4〜5袋ずつつかんで、車後部のプレス機に軽々と放り込む。
記者は両手でひとつずつ。「こういうところばかりならば、ありがたいけど」。中村さんが小声で言う。
その意味は、大通り沿いのコンビニ脇の一般ごみ集積所に来て分かった。「可燃ごみ」の日なのに、瓶や缶がレジ袋からはみ出している。
回収した直後に、通行人がから揚げの包み紙を集積所の隅に捨てていった。カチンと来た。
ある集積所で、臭うな、と思ったら、驚くことにみそ汁が袋からボタボタとこぼれた。「直接袋に捨てる人もいるんですよ」と中村さんはあきらめ顔だ。
そういえば、10日前にバラの枝をごみに出した。あのトゲは、この手袋を貫かなかったか。集める立場になって今さら心配した。自分は何も知らなかった。体験すればするほど、そんな思いが深くなっていく。
同区の場合、収集車は1日あたり6地域を回る。1地域あたりのごみ集積所は30〜40カ所。清掃車が入れない遊歩道では、30メートルほど重い袋を担いで歩いた。途中でめまいがした。
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