ある小型機械メーカーの工場長が全体集会で「10年ぶりに社員旅行を復活させる」と宣言。ところが旅行当日、
20代のヤンチャトリオが大浴場を泡風呂にしたり、鏡を割ったりと大暴れ。これを知った旅館の支配人が激怒し、
後日、請求書を送りつけてきた。工場長は緊急の管理職会議を開き、迷惑行為をした3人にどんな裁きを下すのか?(社会保険労務士 木村政美)
<甲社概要>
小型機械メーカー。従業員数は約300名。3年前に大口取引先との契約が成立。これにより注文数が飛躍的に増加した。
そこで増産体制に対応すべく新たに乙、丙と2つの製造班を設け、各チーフがシフトの管理や技術指導等にあたっている。
乙班は複雑な工程があるため入社10年以上の社員が中心であるのに対し、丙班はほとんど新卒もしくは中途で採用した20歳代の若手社員である。月に1回、工場内の社員全員を集めて「全体集会」を行っている。
<登場人物>
A:甲社工場長。50歳。
B:丙班チーフ。入社20年のベテラン社員で30名の若手部下を指導する。仕事に対しては厳しいが、面倒見が良い一面もある。
C・D・E:入社2年目の社員。3名とも20代半ば。丙班に所属し社内ではいつも行動を共にしている。
● 3人にどんな処分が 下されたのか?
10月上旬、A工場長は今回の旅館への賠償と3人の処遇について、Bチーフも交えて緊急の管理職会議を開いた。事件の経過説明から始まり、彼らに対する損害賠償額請求の有無や金額、また懲罰処分にあたっては就業規則の条文を照らし合わせながら議論した。その結果、今回の事件はCら3人が故意に行ったものであり、会社が旅館側に支払った賠償額を3等分して3人にそれぞれ請求することにした。
また懲罰処分に関しては、ある幹部から、
「会社の名誉を大いに傷つけており、懲戒規程通り3人をクビにすべきだ」
という厳しい意見が出された。しかしBチーフは言った。
「3人の行為は許しがたいものですが、仕事ではわが社の貴重な戦力です。今後はこのようなことがないよう、私が面倒を見るので、処分を軽くしていただけないでしょうか?」
A工場長も賛同し、Bチーフの意見が認められた。そして最終的には3人にはA工場長から厳重注意の上で始末書を書かせ、Bチーフに対しては部下の監督不行き届きとして厳重注意とすることで決定した。
Bチーフは心の中で自分を責めた。
「私の考えが甘かった。自分も調子に乗って飲みすぎ、酔いつぶれるとはなんてザマだ」
Cら3人は処分決定後、A工場長に呼ばれ、かなりきついお灸を据えられた。話が終わり職場に戻る途中、Cがガックリとした表情で「弁償の出費は痛いなあ……」とつぶやいた。Dも続いた。
「俺たちが蒔いた種とはいえ、これじゃしばらく遊びに行けないよ」
すると、Eは冗談まじりに言った。
「俺、仲間の勤め先でバイトでもしようかな……」
その言葉に、CとDは元気を取り戻した。
「それ、いい方法じゃん。俺も誘ってくれよ」
A工場長やBチーフの真剣な思いとは裏腹に、まったく懲りない3人なのであった。
木村政美https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180918-00179666-diamond-bus_all&p=4