庵野秀明も絶賛 “生々しい女性”を描く富野由悠季の演出術「僕の演出する女性は欲望を全肯定している」
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来年、40周年を迎える『機動戦士ガンダム』シリーズは、今なお衰えない“コンテンツ力”でファンの心を捉えている。
そこで今回、シリーズの生みの親にして、76歳の現役アニメ監督・富野由悠季氏のインタビューを実施。
「ファンタジー小説」を執筆する際の“オリジナル論”や、富野監督作品に登場する魅力的なヒロインについて、アニメ監督・庵野秀明氏も絶賛する富野流「演出術」を聞いた。

【画像】ララァやセイラなど魅力的なヒロインが登場する富野小説 名作一覧

■発行部数1,100万部超の小説家・富野が“ペンを折った”理由 「小説家の評価が聞こえなかった」

――インタビューに先立って角川書店の担当者に問い合わせたところ、富野監督が執筆された小説の累計発行部数は1,100万部超(紙書籍のみ)とのことでした。

【富野由悠季】うそ、知らなかったよ(笑)。数字の上ではそうかもしれませんが、2010年に『リーンの翼』(新装版・角川書店)を上梓した時点でペンを折ったんです。それはなぜかといえば、その時点で小説家としての評価が一切聞こえてこなかったからです。

――富野監督はそう謙遜されますが、アニメ監督としてこれほどのタイトルと部数を記録した方は他にはいないでしょう。TVアニメとは結末が異なる小説版『機動戦士ガンダム』(1979年/ソノラマ文庫)や、『閃光のハサウェイ』(1989年/角川スニーカー文庫)など読者の心に強いインパクトを残した作品があり、今なおネットで話題となります。
また、1995年に上梓された『王の心』(カドカワノベルズ)では、その妖美な世界観に魅了された読者も多いです。

【富野由悠季】『王の心』に関しては、僕は統治論の話をよくしていますが、果たしてガバナンスというものを個人でできるのだろうか? と思った時に、結局、組織は個人から離れていくものだと考え、それを組織から排除されていた時の王の立場から書いたのが、『王の心』です。

――家族や国民の行く末を、亡霊となっても見守り続ける主役のグラン王の姿が当時の富野監督を想起させ、とても興味深い内容でした。

【富野由悠季】個人で組織の問題を描きたいと思いながら、それを書ききれかった意味では、『王の心』は一つの到達点であると同時に、“人間を洞察できない富野”を自覚した作品でもあります。
結局、自分には作家としてのモチベーションが足りなかったのでしょう。