徳島市で12日に開幕した「阿波おどり」は、波乱の幕開けとなった。

 去年までは毎日最後に、1500人の踊り手がおどる「総踊り」がフィナーレとなる名物だったが、今年は突如、中止になった。

 このために毎年、初日は桟敷席はどこも満席となるのだが、今年は空席も見られた。総踊りが中止になった理由は、これまで報じられているように
徳島市の遠藤良彰市長と阿波おどりの有名連(阿波おどり振興協会等に加盟する阿波踊り連33連のこと。卓越した技量を披露するこれらの連は、前夜祭や選抜阿波おどり大会などの大型イベントへ参加)をたばねる、
阿波おどり振興協会が対立したためだ。

 そして総踊りが中止となったため、有名連が分散。4つの演舞場で踊る形に変更されたのだ。

 これまで総踊りは、阿波おどり期間中、南内町演舞場で午後10時から30分間、阿波おどり振興協会に属する1500人が太鼓、三味線、カネの音に合わせて一糸乱れぬ踊りを披露していた。

 だが遠藤市長は、「有名連が分散して踊れば、南内町演舞場以外のチケットも売れるはず。だから総おどりは中止する」との方針を打ち出た。
しかし、阿波おどり振興協会の山田実理事長らはこれに強く反発し、こんな爆弾発言が飛び出した。

「遠藤市長は、われわれとの話し合いにすら応じない。強権的な手法で中止を断行した。そんな市長を政治的な思惑で後押ししているのが、地元の徳島新聞と自民党有力国会議員
。この問題の背後には阿波踊りの利権がある。このままでは引き下がれない。13日午後10時にわれわれの手で『総踊り』を復活させる」(同協会幹部)

 阿波踊りが開幕した12日に、山田理事長らが「遠藤市長にいじめられている、阿波おどり振興協会です」と観客の前でしゃべりだすと大きな歓声。

「どこかで、総踊りができないかと考えている」と訴えると、拍手喝采で総踊りへの期待の大きさ、支持がうかがえた。開幕日には桟敷席からもこんな声が相次いだ。

 そして阿波おどり振興協会は急きょ、対応を協議。13日夜10時に「総踊り」を挙行することを決めたという。山田理事長は決意をこう語った。

「総踊りとなるかどうかは別ですが、踊る阿呆に見る阿呆、阿波踊りの原点に立って踊りたい。遠藤市長に止める権限はありません。協会の有志で、これぞ阿波踊りと言われるものをお見せしたい」

 遠藤市長は、13日夜に総踊り決行との情報を聞き、緊急に会合を持ち、阿波おどり振興協会に中止するように申し入れている。

 13日夜が今年の阿波おどりの最大の山場となりそうだ。(今西憲之)https://dot.asahi.com/dot/2018081300007.html?page=2