サントリーグループで四度目の是正勧告 「残業代の減額に合意しないと支払わない」は合法か?
今野晴貴 | NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
8/10(金) 12:00

 7月26日、サントリーグループの自動販売機オペレーター大手・ジャパンビバレッジ社に対して、労働基準監督署が四度目の是正勧告を出した。
一つの企業が労働基準監督署から四度の是正勧告を受けるのは異例のことである。

 同社は、昨年12月に違法な長時間労働(労基法32条違反)を、今年4月には残業代不払い(同法37条違反)を指摘され、是正勧告を受けていた。
さらに、先月は二度、同社に対し、残業代不払い(同法37条違反)の是正勧告が出されたという。

・残業代の減額に同意しないと支払わない

 いったい、なぜ、どのような経緯で、ジャパンビバレッジ社は、残業代不払いの是正勧告を受けたのだろうか。

 労働基準監督署に申告した労働者らが加盟している労働組合・ブラック企業ユニオンによれば、同社は、労働組合との交渉の中で、
会社側が提示した残業代の額(実際よりも大幅に少ない額)に合意するまでは、残業代を一切支払わないという主張を繰り返したのだという。

 そう聞くと、一旦会社側が提示した額だけでも支払ってもらったうえで、その後も交渉を続ければよいのではないかと思う方もいるかもしれない。

 だが、そうはいかない巧妙な策が仕組まれていたのだ。同社が用意している合意書には、「残業代債権の放棄」という文言が含まれていた。
つまり、この合意書にサインしてしまうと、まだ支払われていない残業代の請求権が消滅してしまうようになっていたのだ。

 「今すぐもらえるお金」を身代わりに、「全額の残業代」を放棄させようという戦略だ。実際に、労働組合に加盟していない従業員の多くは、そうした合意書にサインさせられたという。

 こうして、労働組合側が、同社の認めた残業代の額だけでも先に支払うよう求めたのに対し、同社は、残業代の減額に同意するまでは、
残業代を一切支払わないと主張し、議論は平行線となった。そこで、ブラック企業ユニオン所属の労働者が、労働基準監督署に労基法違反を申告していたというわけだ。


https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20180810-00092623/