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 6月16日?17日、フランスのサルト・サーキットで、第86回ル・マン24時間レースが行われた。
結果は皆さんご存じの通り、トヨタ8号車が優勝、7号車が2位。公式的には20回目の挑戦にして、初勝利を物にした。

ずっとル・マンを取材してきた私にとっては、レース主催者のACOやチームのアロンソ選手に対する異様とも言える扱い方はむず痒かった。
本人が望んで、そうなったのかどうかは分からないのだが、その扱われ方は、ル・マンのスピリットとはまったくかけ離れたものだったからだ。
長らくル・マンを取材しているヨーロッパの記者からも、同じ感想は幾度となく聞いているので、あながち私だけが間違っているというのではないと思う。

 過去を振り返ると、ル・マンで9勝しているトム・クリステンセン選手にしても、F1からポルシェに華々しく移ってきたマーク・ウェバー選手にしても、
他のドライバーと扱いは同じ。アウディもポルシェも彼らに対して特別な配慮はまったくせず、その姿勢は清々しかった。
それなのに、ACOやWEC、トヨタGAZOOレーシングが“アロンソ祭り”になっていたことには、強い違和感を憶えた。

まぁ今のWECやル・マンの状況を考えると、そうなるのも分からなくはない。メーカーワークスとしてシリーズに残ったのはトヨタのみ。
プライベーターにはトヨタより速く走れないよう、レース中の上位20%のラップタイム(イエローなしの場合)がル・マンではコンマ5秒以上遅くなければならないとか、
1スティントで許される周回数が1周少ないとかさまざまな規制が設けられ、最初から不利な条件の数々が突きつけられていた。

 結果としては、主催者の目論見通り、トヨタは独走での1?2を決めたわけだが、正直な話をするとプレスルームの中では
パラパラと拍手した記者が数人いただけで、ほとんどの記者はシーンとしていた。
LMP1クラスでは本物の“レース”や“バトル”がなかったため、そういう雰囲気になったしまったと思う。

今年のル・マンは、スポーツカーレースの将来に大きな疑問を投げかける1戦となったと言っても過言ではない。