那覇市壺屋の風情ある赤瓦の古民家。2月早朝、静けさを破る、中国語の怒鳴り声。子どもの激しい泣き声が続いた。

古民家は民泊。隣のアパートに住む女性(39)は、騒ぎで目覚めた。
深夜、若者の大騒ぎもあった。いつものことに窓を閉めたが、もう寝付けなかった。

隣家が民泊と気付いたのは入居後。看板もなく、運営者も分からない。騒音に強いストレスを感じる。
「知っていれば他を選んだ。日常生活にない音や声を聞かされるのはきつい」

壺屋町民会自治会の島袋文雄自治会長は困惑する。「民泊は把握していなかった」。
実は昨年、企業が自治会に依頼してきた。「民泊を運営したい。空き物件を紹介してほしい」。
役員会に諮ったが、断ることで一致した。
「近所トラブルになりそうな案件を、自治会が推薦するわけにはいかない。だが、個人がやることまでは口出しはできない」

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住居用の一戸建てや集合住宅を宿泊用に貸す民泊。東京五輪を控え、宿泊施設の不足が懸念されており、政府が推進する。
外国人観光客の増加も追い風に、東京や大阪などの大都市、京都や北海道など観光地で参入が相次ぐ。民泊ブームは、沖縄にも奔流となり到達した。

民泊は、旅館業法により届け出が必要だが、無許可でも罰則は3万円程度。稼働率を高めれば賃貸の2〜3倍の収益が得られる。
そのため、宿泊業を禁止された住居専用地域や火災報知機がない物件で「ヤミ民泊」が広がる。

民泊を選ぶとき、利用者はサイトで、料金や間取りを確認する。「ヤミ民泊」とみられる物件は、契約しなければ住所は分からない。そのため、近隣住民でもその存在は確認しにくい。

5月、記者は大手サイトに掲載された3軒の民泊がある本島南部の住宅地を訪ねた。
明るい一戸建てが並ぶ海辺の住宅街。サイトの写真にあった建物や生け垣の特徴から2軒を探し当てた。「民泊があるみたいですが」。
通りかかった住民と自治会関係者に問い掛けた。「えっ」。皆、息をのんだ。

6月。民泊3軒の登録はいつの間にか消えていた。(特報・新崎哲史)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/263957
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