「大切な木が虫食いになっている」と村人が訴えた。
森の番人が森の中心にある「最強の木」を調べるとソンタク虫が巣くっていた。
どこにでもいる虫だが、甘い匂いに群がる習性が
▼「切り倒すほどでもない」と番人は判断し、放っていたら虫は大繁殖。
被害は周りに広がり、森はひどいありさまに。
村人は「木を見て森を見ず」と怒ったが後の祭り。実は、番人の胸の中にもソンタク虫が巣くっていて…
▼森友学園を巡る決裁文書改ざんで、検察は最強官庁の面々を不起訴とした。
法に触れるほどひどいものではないと見たようだ。
法律論や裁判の勝算に限れば不起訴の判断もあり得よう。が、問題の根っこはそこではない
▼文書はないとうそをつき、改ざんし、捨てさせる−。
文書が何より大切な役人にとってあり得ない行動は、何のためか、誰のためか。国民が知りたいのはこの点だ。法の番人は「木を見て森を…」の感が募る
▼これが、公文書から政治家の関与を意図的に削除しても罪に問われないという前例になれば最悪だ。
出世や保身に目がないソンタク虫が繁殖し、公文書の信頼性を食い荒らそう。
行政ひいては国そのものが信じられなくなる
▼驚いたことに、与党はこれで幕引きを、と。
改ざん文書にだまされたのは国会なのに。一度は「刑事訴追の恐れ」で逃げられたが、今度こそ。
国会は国民を代表し、威信を懸けて真相を明らかにせねば。
=2018/06/02付 西日本新聞朝刊=
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/syunzyu/article/421462/