直6エンジンは6つのシリンダーが均等なタイミングで燃焼し、互いに振動を打ち消し合う“完全バランス”の
エンジンとも呼ばれる、静粛性に優れかつスムーズな回転フィーリングが特長だ。かつてBMWの直6エンジンは、
絹のような滑らかさから“シルキー・シックス”と形容されていたほどだ。

しかし、エンジンルーム内に縦長に配置するため、クラッシャブルゾーンの確保が難しく、前方衝突時の安全性に
課題があった。1997年、メルセデスは直6エンジンの生産を終了し、より小型化が可能なV型6気筒エンジンに
置き換えた。

20年の歳月はエンジン技術を進化させた。鍵となるのは近頃よく耳にする“電動化”だ。S450は車名にはうたって
いないが、マイルドハイブリッドカーだ。直6エンジンとオートマティック変速機との間にスターターと発電機を
兼ねたモーター&インバーター「ISG(Integrated Starter-Generator)」を配置している。ISGはエンジンの
始動時やアイドルストップからの再始動時にはスターターとして働き、加速時にはエンジンをアシストする。
また、エンジンにとっては、ISGがあるのでウォーターポンプやエアコンを駆動するためのベルト類が不要になる。
結果、直6をV6エンジンなみに小型化することに成功した。メルセデスはこのユニットを、「先代V6エンジン比で
約20%のCO2排出を削減し、出力は8気筒エンジンに匹敵、d15%以上向上し、燃費は4気筒エンジンと同等である」
とうたう。

じつはこのISGを使ったシステムは、スズキの「S−エネチャージ」と同様のものだ。最大の違いはスズキが
従来からの12Vシステムであるのに対して、メルセデスは定格電圧を高度な制御が可能な48Vにしたこと。
いま欧州メーカー各社は電気システムを12Vから48Vへと移行する開発を急いでおり、S450は48Vシステムを
搭載した日本上陸第1号車というわけだ。

https://gqjapan.jp/car/review/20180526/mercedes-S450-fujino