■『20世紀に生きる全裸族 ザ・ハンターズ』の内容とは?
1年を通してほとんど雨は降らない北カラハリ地方。獲物を追って移動する部族の人々は、性器をフンドシみたいな布で隠している。矢尻に甲
虫をすり潰して作った毒を塗り、獲物はブタ、ヤマアラシなどだが、ここでは最も絵になるキリン狩りをメインに据える。巨大なキリンは1発で
は仕留められず、矢が当たった1頭に毒が回って力尽くまで、数日かけて根気よく追
跡する。すでに姿をくらませているキリンの足跡や糞などの痕跡を事細かに分析する様子、彼らがハイテク抜きにどうやって調査しているのかが克明に記録されていく。
さて、まだ狩りに出られない子供たちは、オモチャのような小さな弓矢を使い、小動物や昆虫を的に狩りの練習をする。地をはう甲虫を射て
遊ぶ子供が映し出される。よろよろと懸命に逃げながら、刺さる矢が増えていきヤマアラシのようになった甲虫が哀れだが、彼こそが少年時代
のニカウさんだ! 撮影時は13歳前後と思われる。この甲虫を一心不乱にプスプスや
っている少年が、将来は裸族の狩人ではなく世界的スターになるとは、この時点ではお釈迦様でもわかるまい。
キリンの肉は村で各家庭に分配され、その夜はハンターの報告談で宴が開催され盛り上がる。彼らは狩りに失敗しても、それを報告しないし、
相手も聞かない。結果だけを受け止め、仲間の失敗を責める者は誰もいないのだ。老人は昔を思い出し、まだ狩りに出ていない子供たちは興味
津々に聞き入る。こうして狩りの話は次の世代へと語り継がれていくのである。終わり。
ニカウさん(本名ザウ・ゴマ)は、実はカラハリ砂漠があるナミビアの俳優(現地部族には所属)で、小学校の校庭で本業の庭師をしている
ところを映画関係者からスカウトされた。狩人になっていなかったとは、練習台にされた甲虫は絶対アノ世で怒っているぞ。
「ブッシュマン・シリーズ」の後、ニカウさんは香港映画に出演したが、これがとってもカルト。『ブッシュマン キョンシー アフリカへ行
く』(91年)では、ブルース・リーの霊が憑依したニカウさんが部族の子供を奴隷売買のためさらおうとする白人を「アチョー!」とやっつけ
、飛行機から降って来たキョンシーがブードゥーの巨人ゾンビと戦うハチャメチャ・ムービー。『ブッシュマン ニカウさん中国へ行く』(94
年)では、中国のマラソン大会に出場しパンダ密猟者を追う! 何に出演しても面白い人だ。
2003年、ニカウさんは薪を拾いに出たまま帰宅せず、野外で遺体となって発見された。死因は結核説が有力で、享年59歳だった(推定だけど)。彼の本来の姿が見られる『20世紀に生きる全裸族 ザ・ハンターズ』は、ブルーレイディスク化してほしい1本である。
http://tocana.jp/2018/04/post_16494_entry_2.html