元ITニュース記者という異色の経歴を持ち、テクノロジーに突き動かされる人々の感情を丁寧に描いた作品を発表し続けている漫画家・山田胡瓜(やまだきゅうり)さん。
第21回文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞した『AIの遺電子』(週刊少年チャンピオン)の連載を終え、続編となる『AIの遺電子 RED QUEEN』(別冊少年チャンピオン)を新たにスタートしています。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1804/06/news009.html
「漫画は今、本来届くべき人に届いていない」
――海賊版サイトが、出版社の売り上げを大きく毀損しているという意見については?
そういう部分はもちろんあると思います。でも、自分自身が学生だった頃を振り返ると、好きな雑誌は買っていたけど、買わなくても立ち読みするとか普通にやっていたわけですよ。あとはブックオフ。ブックオフは相当出会いのポイントになっていて、ちょっとつまみぐいしておもしろかったら買うっていう。
だから、タダで触れあうっていうのがぼくの入口だったんです。買ってからおもしろさに気付くわけじゃなくて、無料で触れるっていうのが基本だったわけです。今の若い人もその流れで買うんじゃないかなって。
――海賊版サイトでは一部ではなく全部読めてしまうので、そこから購買に結び付かずに完結してしまうのでは。
それはやはり問題で、だからそういうサイトが存続してほしいわけではないけれど、「読み手のモラル」に任せて解決するのは無理だと思います。「あったら見ちゃう」っていうのはもう仕方ないわけで。
アニメの違法アップロードなんかも同じですよね。海外のファンが勝手に字幕を付けてアップロードしちゃうとか、いけないことだけど、そこで新たなファンが作られてるっていうのも事実なんですよね。違法ですが事実なんです。
――作家として、正規な形で作品へのタッチポイントを増やしたいというわけですね。
漫画は今、本来届くべき人に届いていない、っていう印象をすごく受けているんです。
自分も一人の読み手として、「最近おもしろい作品ないなー」とか思ってた時期もあるんですが、当たり前だけど探せばいくらでもあるんですよね。でもそれがなかなか見つからない。探し方が分からない人もいる。
全社横断的なサービスができれば、他社の作品も含めてもっと精度の高いレコメンドをしてくれるだろうから、届くべき人に届けられるようになる。
最近(定額制で聴き放題の)Apple Musicをずっと使っているんですが、すごくいいんです。買うか買わないかっていう決断をしなくていいのがとにかく楽で、音楽を聴くこと自体のハードルがすごく下がる。楽になる。
定額制だと他社サービスへの乗り換えも気軽にできますよね。(買い切り型のような)「今までためてきた資産」っていう考え方が変わるから、さっき話した「サービスの存続性」みたいなことも考えなくてよくなります。
音楽の場合はレコメンドがはっきりと出会いの1つになっていて、「この曲いいなー」というのが見つかったらそのアーティストを深堀りしていって、結果的に自分の好きなものを見つけられる。漫画もそうなればいいなと思っています。
(つづく)