訪日客望む無料WiFi 東海道新幹線が出遅れたワケは
https://www.asahi.com/articles/ASL1Z43DFL1ZOIPE00W.html
昨年末、米・シアトルから観光目的で初めて来日した
コーリー・ランホールさん(26)は、肩をすくめた。
名古屋から東京へ移動するため、新幹線を利用することにしていたが、
車内でWi―Fiを使えそうにないと知ったからだ。
「調べ物をしたり、メールを見たりするつもりだった。
一緒に旅行している父と話すか、景色でも眺めるよ」(中略)
東海道新幹線は2009年、他社に先駆けWi―Fiを導入。
ただ、大手携帯電話会社などと事前契約が必要で、あくまで国内利用者向け。
大半の訪日客は使えないのが現状だ。JR東海の柘植康英社長は
昨年11月以降の定例会見で、東海道新幹線への無料Wi―Fi整備について
「いろいろ課題があり勉強中」と繰り返した。
日本政府観光局の特別顧問で、文化財修復を手がける
小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長(52)は
「東海道新幹線の主要顧客のビジネスマンは将来減るのに、
インバウンド対応に後ろ向き。先見性が足りない」と指摘する。
さらに「来日後に観光地の情報を調べる人は多い。東京―新大阪で
2時間半の移動時間を有効に使うため、無料Wi―Fiは不可欠」としたうえで
「高収益企業のJR東海なら投資可能。やる気がないだけ」と苦言を呈した。
JR東日本とJR西日本は昨年11月、東北、上越、秋田、北陸の
各新幹線の車内で無料Wi―Fiの提供を始めると発表。
訪日客へのサービス向上が狙いで、JR東が今夏、JR西が今年下半期の開始を目指す。
JR東海も2カ月半遅れの1月25日、同様のサービス開始を公表した。(中略)
JR東海のある幹部は、導入に時間がかかった理由を
「外国人客のためにどこまでやるかの問題だった」と打ち明ける。
関係者の一人は「日本を代表する新幹線は東海道という誇りが我々にはある。
他社に先行され、慌てて発表したのだろう。追いついてホッとした」と話す。