事故仕組まれ「加害者」に 駐車場でバック死角から衝突 保険金詐欺団の巧妙な手口とは? 福岡で事件続発
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自動車を運転中に接触事故を起こしたら、誰でも慌ててしまう。それが犯罪グループによって巧妙に仕組まれた詐欺だとしたら−。
特命取材班は、いつのまにか事故の「加害者」にされていたという福岡県の男性のケースをきっかけに、保険金詐欺の手口に迫った。
ガツン−。同県飯塚市内の駐車場で60代男性が軽乗用車をバックさせ始めたところ、何かにぶつかったような鈍い音が響いた。2016年3月上旬のことだ。
発車前にサイドミラー、バックミラーに何も映っていないのを確認したつもりだった。車外に出ると後方に、車体に多数の傷がある他県ナンバーの白いワゴン車があり、若い男3、4人が降りてきた。
「膝打った」「おいちゃん、どしたん」「携帯のガラスが割れたけ」。男たちは声を荒らげなかったが、自分たちは「被害者」で、男性に責任があると心理的に追い込むような言葉を続け、警察に通報した。男性は相手にけがをさせてしまったと思い込み、なぜ事故に至ったのか、冷静に考えられなかったという。
「死角」を狙い故意に衝突
詐欺事件かもしれないと知らされたのは半年後。加入している損害保険会社からの電話だった。福岡県警の捜査で、男たちが後方からワゴン車を近づけ、事故を仕組んだ疑いが浮上。リーダーとみられる井上由吉被告(57)=詐欺罪で公判中=ら男9人が逮捕された。
捜査関係者によると、9人のうち5人がワゴン車に乗車し、駐車場を周回。運転席から見えない「死角」が後方にできている車を探し、その車のバックランプが点灯すると、自車を近づけて故意に衝突させる手口だったという。
取材班は現場になった駐車場に向かい、男性と同じ状況で車を止めてみた。両脇を別の車に挟まれていると、バックする際に左右とも後方に、死角ができることを確認した。
男性は「事故が大ごとにならず、手出し金も自分の車の修理代のみ。むしろほっとしていた」と明かす。
保険金詐欺事件が続発
福岡県筑豊地区では13〜16年に複数のグループによる保険金詐欺事件が続発。県警はこの1年間だけで計31人を詐欺容疑などで逮捕、書類送検した。
井上被告らの一連の事件で支払われた保険金の総額は3906万円。関与した人数や件数を考えると、それほど巨額ではない。被害を受けた損保会社の担当者は言う。「自賠責保険の上限を超えて請求はしない。小口でコツコツ型だった」
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