音楽教室・JASRAC訴訟
著作権料支払い、必要性どこまで
http://mainichi.jp/articles/20180125/ddm/004/040/015000c
生徒は「公衆」か、司法がどう判断
大きな争点は、音楽教室に集う生徒は「公衆」なのかどうか−−とみられている。過去の裁判例はどうか。
参考になるのは、スナック店などで客がカラオケを使ってJASRACに登録されている楽曲を歌った場合に、
「演奏権」の侵害に当たるかが争われた訴訟(クラブキャッツアイ事件)だ。
最高裁は1988年、客やホステスが歌うのは「歌唱が公衆である他の客に直接聞かせることを目的とするものであることは明らか」として、
演奏権の侵害を認めた。判決では、店員が歌っても、客が歌っても「公衆に聞かせる目的」で歌っている−−と判示した。
演奏権を巡っては、社交ダンス教室が使用する楽曲について、ダンス教室側とJASRACが争った訴訟(社交ダンス事件)もあった。
名古屋高裁は2004年、ダンスレッスン目的で楽曲をCDで再生するのは「公衆に聞かせることが目的」として、演奏権の侵害を認めた(最高裁で確定)。
過去の裁判では、「公衆」は「不特定の人」や「特定の多数の人」の意味で捉えられた。一人カラオケでも不特定であるとして演奏権が及ぶとされる。
「これまでの判例や著作権法の解釈からすれば、音楽教室のレッスンも『演奏権』を行使していると判断される可能性が高い」と著作権法に詳しい上野達弘・早稲田大教授はみる。
ただ、「演奏権」に基づく使用料徴収について、歌手の宇多田ヒカルさんは「もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、
著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな」とツイート。
他の作詞家や作曲家からも「音楽教室で練習のために弾いたり歌ったりするものから、使用料をもらいたいと思ったことなどない」とする声が上がった。
JASRACは今月にも使用料を徴収する方針だったが、音楽教室側は「裁判が確定するまで保留してほしい」と文化庁に裁定を求めており、審議が続いている。