日本人が戸惑う「ベトナムでは治療費は前払い」
ベトナムの病院は治療費の前払いが求められる

 私がベトナムに来て戸惑ったことのひとつは、治療費が前払いであることだ。これは緊急時でも同じである。
 
 ホーチミンシティ滞在中に急病になった知人に付き添って、病院に行ったことがある。急を要する状況であったにもかかわらず、病院側のスタッフは冷静に「最初にお金を払ってください」と言う。
 
 知人は海外旅行保険に入っていて、それを提示したのだが、現金での支払いを求められた。「後で保険会社から還付を受けてください」とにべもない。クレジットカードで支払いをしようとしたが、それも受け付けてもらえない。

 治療前に支払うのは「保証金」であり、実際にかかった治療費が分かった時点で、差額を返金するというシステムだったのだ。治療を始めてから「保証金」の範囲で対応できないことが分かれば、追加でお金を払うことが求められる。
 
 折悪しくその日は日曜日で、銀行は開いていない。すると「どこの銀行に口座をお持ちですか?」と尋ねられ、銀行名を告げると、最寄りのキャッシュディスペンサーの場所を丁寧に教えてくれた。こういう対応に病院側も慣れているのかもしれない。

 ベトナムはまだ所得の低い人が多い。「医は仁術」と言われるが、「まず治療を」では、病院の経営が立ち行かなくなってしまうのだろう。「病院に意識不明の重病人が運ばれてきたら、医師は、患者の『症状の確認』をするより先に、患者の『財布の状態』を見る」という言葉もあるそうだ。
緊急時のことを考えると、財布の中に、常にある程度の現金を入れておいたほうがいい。
http://diamond.jp/articles/-/151012