(続き)
■進まない消費主導の成長への転換
これまでの中国の高成長は、一貫して投資が主導してきた。しかしそうした投資主導型の
成長が足元では限界に達しており、個人消費主導型の成長モデルへの転換が期待されてい
る。また、格差是正のための労働分配率の向上や、企業優遇施策の見直し、さらなる投資
抑制の実施など、基本的な構造改革を推進していくことが重要と指摘されている。
しかし、これらは決して容易なことではない。
その背景には社会保障制度への不安や、資金の流動性への制約といった問題がある。社会
保障への不安から、個人の資金は貯蓄や現金の形で留保される傾向が強くなり、消費へと
回りにくい。
さらに、現状では個人での資金の借入は困難なため、生涯所得に見合った消費より少ない
額しか消費できない、というのが中国の現実なのだ。
中国当局はこうした状況を真摯に直視し、解決策を模索していくべきであるはずなのだが、
そうした動きはなかなか見えてこない。

■中国政府が発表する統計は信憑性に欠ける
誤解を恐れずに言うならば、経済減速の事実を隠蔽するような動きすら感じられる。それ
が如実に表れているのが、GDPや外貨準備、個人消費といった、政府発表の数字の信憑
性の低さである。
中国国内でも「景気対策で最後に頼りになる官庁はどこか」という問いに対して、「財政
省でも中国人民銀行(中央銀行)でもなく、数字をいじれる国家統計局だ」と、笑えない
笑い話が流布しているという。
(以下略)