コネで入ったら自由な研究ができなくなってしまう
ジロウさんは地方の進学校を卒業後、東京の私大に進んだ。大学の研究者になるのが夢だった。大学院などを経た後、全国の大学で任期付きの講師や准教授などとしてキャリアを積んだ。この間、
人脈をつくる機会がなかったわけではない。若い頃、学会などに顔が利く教授から公募の際には推薦しようと持ち掛けられたが、断ったという。
「コネで入ったら、お世話になった人に頭が上がらなくなる。自由な研究ができなくなってしまうと思ったんです」
現在、妻と3人の子どもは地方都市で暮らしている。自宅は妻が両親から相続した持ち家だが、東京で生活するジロウさんには別途6万円を超える家賃がかかる。家族と離れて暮らす理由を「自己投資です」と
言い、関東圏のほうが非常勤講師や教員の仕事を見つけやすいほか、参加したい研究会なども東京で開かれることが多いからだと説明する。
妻は嘱託の保育士で、年収は200万円足らず。夫婦の収入を合わせても家計は厳しく、ジロウさんは大学での仕事を失って以降、酒とたばこをやめた。食事はコンビニのおにぎりのほか、牛丼などの
ファストフードで済ませることがほとんど。食費は抑えられるが、代わりに持病の糖尿病の状態を示すヘモグロビンA1c(エーワンシー)の数値は、この1年間で「6.5」から「7.7」に急上昇した。
コネや人脈を利用する機会を拒んできたことに「悔いはない」と語る。その一方で、高校生になる子どもたちがアルバイトに精を出す姿を見たり、大学受験を控えた子どもが「国公立しか受けない」と
言っているのを聞いたりすると、申し訳なく思うと言う。また、大学時代の同窓生たちがいわゆる大手企業に就職し、今は年収1000万円以上を稼ぐまでになっていると知ると、
「もう少し賢く生きる道もあったのでは」と複雑な気持ちになる。
http://news.livedoor.com/article/detail/13795747/