所有者不明の空き家、市が売却橋渡し 滋賀・近江八幡
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20170914000029

 滋賀県近江八幡市長光寺町で所有者不明の空き家が
約20年間放置されて朽ち果て、同市が家事事件手続法に基づいて
土地と建物の所有権移転の橋渡しをしていたことが分かった。
市によると、債権者でない自治体の働きかけで所有権移転に
つながったのは県内で初めてとみられる。所有者不明の空き家対策に
悩む他の自治体の注目を集めそうだ。

 近隣住民らによると、空き家は木造平屋で住人の男性は
1997年8月に死亡した。草木が生い茂り、建物も次第に
傾いて崩れ落ちたため、市に「物騒だ」「何とかしてほしい」と
相談したが、担当者は「民事に介入できない」と答えた、という。

 2015年施行の空き家対策特別措置法を受けて、市は環境課や
建築課など複数の部署が協力し、空き家の所有者や相続人の有無の
調査に乗り出した。男性に家族がいないことは分かったが、
固定資産課税台帳や戸籍謄本、不動産登記簿、税務情報からも
所有者や相続人を特定できなかった。

 同法に基づく強制代執行の対象となる「特定空き家」に
該当するか分からないことから、市は司法による解決を模索。
16年3月、家事事件手続法に基づき、大津地検に「相続人の存在、
不存在が明らかでない死亡人が発生した」と通知し、これを受けて
同地検が大津家裁彦根支部に相続財産管理人の選任を申し立てた。

 管理人選任を知らせる公告や、相続財産の債権者を確認する
公告を経て、相続人がいないことが確定。土地と建物が県内の
不動産業者に売却され、今月1日に所有権が移転した。現在、
同社が重機を使って更地にしている。

 隣家の男性(69)は「7〜8年前に瓦も壁も崩れ落ち、
仏壇や食器が散乱していた。苦情を言う相手がおらず途方に
暮れていた。今後はきちんと管理してもらえるのでほっとした」と喜ぶ。
市建築課の栄畑隆夫課長は「手続きに時間はかかったが、解決は喜ばしい。
所有者不明の空き家対策として参考になるのではないか」と話している。