関東防空大演習を嗤う
桐生悠々

特に、曾ても私たちが、本紙「夢の国」欄に於て紹介したるが如く、近代的科学の驚異は
赤外線をも戦争に利用しなければやまないだろう。
この赤外線を利用すれば、如何に暗きところに、また如何なるところに隠れていようとも
明に敵軍隊の所在地を知り得るが故に、これを撃破することは容易であるだろう。
こうした観点からも、市民の、市街の消灯は、完全に一の滑稽である。
要するに、航空戦は、ヨーロッパ戦争に於て、ツェペリンのロンドン空撃が示した如く

空撃したものの勝であり空撃されたものの敗である。
だから、この空撃に先だって、これを撃退すること、これが防空戦の第一義でなくてはならない。