大浦湾を臨む名護市汀間に7月、「大浦湾開発」という会社が事務所を構えた。立ち上げたのは地元・名護漁協の漁師46人。
漁業だけでは今後の暮らしが先細りすると、大浦湾で進む新基地建設に絡む作業や海上警備などの受注を目指す。
一方、汀間の住民の多くは新基地に反対しており、摩擦が起きないかとの心配も出ている。(社会部・伊藤和行)
現実の生活考えて
大浦湾での新基地建設の工事現場が見渡せる汀間の集落。
今月9日午後、同社の事務所開きがあり、汀間や辺野古の漁師ら約50人が集まった。社長に就いた漁師歴約40年の男性(63)は「漁ばかりしてきたので会社経営は右も左も分からない。漁師同士で力を合わせ、地域に潤いをもたらしたい」と話した。
社長らが所属する名護漁協は昨年11月、大浦湾の新基地建設に向けた立ち入り禁止区域である「臨時制限区域」の漁業権を放棄した。
だが社長は「海が目に見えて汚れていくことは悲しい」と胸中を明かす。
子どものころから大浦湾で潜って魚を捕ってきた。海面から透けて見えるたくさんの魚やサンゴに「気持ちが晴れた」と振り返る。
25歳で漁師となり、沖合でマグロ中心の漁をしてきた。しかし最近は漁獲量が減り、赤土の流出などで目に見えて大浦湾が汚れてきたと感じている。4月には基地建設のため大浦湾を埋め立てる工事も始まった。
「現実の生活や将来の地域の雇用などを考えて」と社長は昨年10月、名護市内の自宅に同社を設立。名護漁協の汀間支部と辺野古支部の漁師に呼び掛け、7月までに計46人が株主となり、汀間漁港向かいにある空き家に事務所を新設した。
今後、漁師たちは本業の漁業は続けながら基地建設工事に絡む砂利の運搬・販売や警戒船作業などの仕事を請け負うという。
社長は「経営が安定すれば地域の活性化に貢献したい。将来的には、大浦湾をきれいに戻すことに取り組みたい」と話した。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/132026
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