パソコン通信時代から現在まで インターネットはどう語られてきたのか?

僕たちのインターネットはどのように語られてきたのか。『僕たちのインターネット史』の著者である、
ばるぼらさん・さわやかさんがAERAインタビューに答えた。

1980年代のパソコン通信の時代から、90年代の黎明期を経て、現在まで。
インターネットの歴史を「その時代の人が、どう思っていたのか」(さやわかさん)
という視点を軸に描いた本書は、これまでインターネットが、
どのように語られてきたのかを歴史的に網羅する「言説史」だ。

雑誌の言説史は、インターネットの歴史と重なり合う。
さやわかさんにとって雑誌は「書籍のように専門的ではなく、まさに〈雑〉というように、
勝手に複数のカテゴリーを束ねているので、柔軟に拡がっていく」存在だった。
例えば「テクノポリス」(徳間書店インターメディア)というパソコン雑誌。
同誌が同人文化を扱うようになり、最終的には美少女ゲーム専門誌のようになる変遷から、

80年代の日本では、インターネットは、その始まりにある
「大企業や政府による情報の独占に対抗する」といった民主的な思想を欠いた
「趣味」の文脈で受け入れられたと描く。

黎明期の90年代は、インターネットへの入り口が、
オーディオ誌「FM STATION」(ダイヤモンド社)、テレビ誌「TV Bros.」(東京ニュース通信社)、
カルチャー誌「STUDIO VOICE」(INFASパブリケーションズ)など様々なジャンルに拡がったことから、
インターネットがアングラ・サブカルチャーの文脈で受け入れられたと説く。

ゼロ年代以降、インターネットの大衆化が進み、商業化がどんどん進行していく
過程で取り上げられるのは、雑誌ではなく新書や書籍だ。
それは、インターネットがオープンな存在ではなくなった時代の難しさと重なる。
そこでは、言論の自由か管理かという単純な議論ではなく、
どのような「倫理」でその両方の利害を調整するのかが迫られるのだ。

(後略)
※AERA 2017年8月7日
https://dot.asahi.com/aera/2017080300096.html