【ベルリン中西啓介】北海道内で盗掘されドイツで収蔵されていたアイヌ民族の遺骨について、日本政府は7月31日、ベルリンの在独日本大使館で返還式を開いた。
収集から138年ぶりに遺骨は日本政府に返還された。国連の「先住民族の権利に関する宣言」に従い、外交ルートを通じた返還が行われるのは初めて。アイヌ民族を代表して出席した、
北海道アイヌ協会の加藤忠理事長は「歴史的一ページを画す記念日になった」と述べた。
式には加藤理事長のほかに、収蔵団体である独民間学術団体「ベルリン人類学民族学先史学協会」(BGAEU)のアレクサンダー・パショス代表、
内閣官房アイヌ総合政策室の平井裕秀室長が出席。返還されたのは、昨年8月の毎日新聞の報道で存在が明らかになったドイツ人旅行者ゲオルク・シュレージンガーが1879(明治12)
年に札幌市内の墓地で収集した頭骨。BGAEU創立を主導したベルリン大教授のルドルフ・ウィルヒョウが保管していた。
パショス代表は「当時の法律に違反するだけでなく、アイヌ(の意向)への配慮がなかった」と述べ、返還経緯を説明。
平井室長は「100年以上も遺骨が保管されていたことは遺憾だ」としたうえで、返還決定に謝意を示した。また、第1号返還について「大きな一歩であり、引き続き海外からの返還に向け努力したい」と述べた。
3者は返還の「証明書」となる覚書に署名。パショス代表から加藤理事長と平井室長に遺骨が入った白い木箱が手渡された。
ドイツではBGAEUだけでなく、政府系研究機関もアイヌ遺骨を保管している。加藤理事長は「先住民の人権課題に配慮してもらうことを希望する」と述べ、
さらなる返還を要望。首脳レベルの交渉による包括返還なども模索するよう求めた。
返還された遺骨は、8月2日に札幌市内の北海道大学構内にある「アイヌ納骨堂」に一時的に安置される。同4日には恒例の慰霊式「イチャルパ」が行われる予定で、アイヌ式の慰霊を受けることになる。
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